お葬式って日本では、9割程度は「仏式=仏教式」です。仏式と言っても、いくつもの宗派が有りますが、仏式以外では神式やキリスト教式など、お葬式には何らかの宗教がほぼ関係します。
そんな中、2020年の現在では、まだ「ごく稀(まれ)ですが無宗教のお葬式」は有ります。
しかし、潜在的に「無宗教でお葬式をやりたい」と考えている人は、実際の無宗教のお葬式の数より何倍も多いと実感しています。
きっと、これからは「無宗教のお葬式=無宗教葬」は、かなり増えていくと思っています。
そこで、今回は、「無宗教葬を実際に行うまでの準備段階での流れや注意点」をまとめてみました。
無宗教葬とは
無宗教でお葬式をするとは、「お寺さんやお宮さんなどの宗教者にお葬式に来て貰っての儀式をしないお葬式」です。
と言うことは、基本的には「お経を唱えたりはしない」お葬式です。
日本でのお葬式のほとんどが「仏式=仏教式」なので、お経を唱えないお葬式なんて参列したことはほぼ無いと思います。
進行上での無宗教葬の考え方は、
・お経を唱えない。
・宗教儀式をしない。
これ以外は、自由な内容となるので、「無宗教葬=自由葬」と呼ばれていたりもします。
*無宗教葬の式中に「焼香をしたり・合掌をしたり」する場合も有ります。「これをやってはいけない」というルールは有りません。また、仏式の場合の焼香の代わりに「献花や献灯」をする場合もあります。
無宗教葬の準備における注意点
まず、「無宗教でお葬式をする」と考えるのは簡単ですが、「実際にするのは難しい」という現実があります。
私は、無宗教葬やお葬式後に無宗教で行う「偲ぶ会・お別れ会」を何度もプロデュースさせて頂きました。その中で、この難しさを何度も実感しました。
では、何が難しいのかをまとめてみます。
無宗教でお葬式をしようとする場合の5つのハードル
私に経験上は、下の5つのハードルが有ります。
1・依頼する遺族側に経験が無いので、人と違うことをするのが怖い、と思ってしまう。
2・まだ一般的ではないので、周囲に失礼ではないか、と思ってしまう。
3・遺族全員が「無宗教葬でお葬式をしたい」と意見が一致しにくい。
4・無宗教葬の場合は、お墓や仏壇、納骨や法事はどうしたら良いのか分からない。
5・実際に無宗教葬をする場合、宗教儀式が無い分、進行を作りにくい。
逆に考えれば、
これさえクリアすれば、無宗教葬は行えるのです。
そこで、次にこの5つのハードルを「5つのステップ」として説明して参ります。
無宗教葬を執り行うまでの方法:5つのステップ
ステップとして考えると、理解しやすいと思います。
このステップを読んでみて、仮に今回は無宗教でお葬式を見送るとしても、どんなお葬式の形式であっても、「心を込めて出来る範囲でお別れのセレモニー」を行えば、現時点での最善の選択と私は考えます。
だから、無宗教でのお葬式を断念したとしても、それは「現時点では仕方がなかった」と気持ちに区切りをつけて、出来る範囲で心を込めてお別れをしてください。
それでは、1つずつ説明していきます。
①依頼する遺族側に経験が無いので「人と違うことをするのが怖い」と思ってしまう。
ご遺族側に無宗教葬の経験が無い面はありますが、それは、仕方のないことです。
実際には、「お葬式の経験自体が無いに等しい」のですから、葬儀のプロの葬儀社に、色々なアドバイスやサポートをして貰いましょう。
無宗教葬を行いたい場合は、出来れば、「葬儀社に事前相談をして、準備を進めるのがベター」です。
②まだ一般的ではないので、周囲に失礼ではないか、と思ってしまう。
ご遺族が参列者から「失礼」「非常識」と思われないかと不安が有る場合も想定できます。
このような気持ちになるのは理解できますが、失礼なことなど全くありません。
しかし、実際に「無宗教葬を行う」に当たっては、①と同じように、葬儀社と連携して、ご遺族も参列されて方々も「良いお葬式だった」と思える内容にしたいものです。
それが出来れば、まったく失礼ではありません。
周囲が行っていないこと・一般的ではないことを行うのは勇気が必要です。
実は、今では当たり前の「葬儀会館でお葬式」や「家族葬」は、昔には無かったのです。
昔って言っても、そんな昔ではありません。西暦2000年頃までのお葬式は「近くの集会所や町会館、自宅やお寺」でお葬式をするのが当たり前でした。それ以前は、現在の主流である葬儀専用会館すらなかった時代です。葬儀会館が次第に出来て行っても利用が少なくて主流ではなかったのが2000年頃までです。
しかし、当時に葬儀会館でお葬式を執り行う勇気のある遺族がいらっしゃいました。そうすると、参列された身内や親戚や参列者が「葬儀専用会館なら、気候に左右されず使い勝手や居心地も良いので、遺族も参列者も両方にとって良いな」と気が付いて、2005年頃には葬儀専用会館でお葬式をするのが「主流」の時代になりました。5年で急速に流れが変わりました。
家族葬もそうです。2008年頃から急速に主流となりました。
「これって良いな!」と参列者から思ってもらえると、「失礼」でも「非常識」でもないので、そのようにお式を進行するには、「葬儀担当者と綿密な打ち合わせを行う」ことをおススメします。
③遺族全員が「無宗教葬でお葬式をしたい」と意見が一致しにくい。
ここが、最大のハードルだと感じます。
無宗教でお葬式をするには、特に身内(肉親)が「無宗教でお葬式をしよう」という意見にまとまらなければ、実際に行うのは難しくなります。
お葬式では、遺族の一人一人が様々な宗教観を持っていたとしても、「故人には、良いところに行って欲しい」と皆さん希望するはずです。
そうすると、やはり「お寺さんに読経をして貰ったほうが、良いところに行くんだ」という気持ちになるのです。そして、「お寺さんに依頼してお経を唱えて貰って儀式をしたから、自分たちは出来るだけのことをした」という、気持ち的にも納得ができたりします。
だから、日本では普段は特定の宗教を信仰していない人の割合がとっても多くても、単純に、「普段は特定の宗教を信仰していないからお葬式は仏教でしたくない・お寺さんに来て欲しくない」とはなりません。
むしろ、「普段は特定の宗教を信仰していないからこそ逆にお葬式にはお寺さんに来てもらってお葬式をしたい」思っている人が多くいらっしゃると感じます。
お寺さんや宗教者にお葬式の儀式をして欲しくない人は、何かの理由が有って、特定の宗教もしくは宗教全般に対して嫌悪感を持っている人だと思います。
*ご遺族全体が「無宗教でお葬式をやろう」という考え方でまとまっていれば、このステップはクリアです。
「無宗教で行いたい」というよりは「お寺側に問題を感じている」人が多い?
こう感じるのは2つの理由です。
御布施が高い
お寺さんに対しては、お葬式は仏式でお経を唱えて貰って儀式をして欲しいのだけど「御布施が高いからお寺さんなどの宗教者を呼びたくない」っていう意見が多いと感じています。
最近の都市部では、葬儀社の紹介やインターネットの検索で、儀式(お葬式)だけのお寺さんを見つけることが出来ます。そんな場合は、御布施もそう高くは有りませんし、葬儀社が交渉してくれたりします。
また、1日葬(ワンデイ葬)といって、お通夜を行わない「葬儀式(告別式)」のみのお葬式のスタイルも出現し、お通夜に来て頂かない分の御布施が安く済んだりします。
だから、「御布施が高い・御布施に対して納得できない」という問題も少なくなりつつあります。
普段付き合っているお寺が嫌い
御布施の金額も納得がいかないが、普段に接しているお寺さんに対して嫌な感情を持っている人もいらっしゃいます。「あのお寺さん、偉そう」とか「あのお寺さんは自慢話が多い」とか・・・。
だから、せっかくのお葬式なのでお経を唱えて貰いたいから仏式でやりたいけれど、あのお寺には頼みたくない・・・なんて意見も実際に有ります。
この場合は、都市部に住んでいる人は、先祖からの同じ宗旨のお寺さんを葬儀社に紹介して貰うことは可能です。
ところが、都市部以外では地元の付き合いが有るので、同じ宗旨の他のお寺を探すとなっても簡単には受けてくれにくいのです。紹介されるお寺も元々のお寺さんの事を知っているので、気を遣われます。
となりますと、👇答えは4つになります👇
1・我慢してそのお寺に頼む。
2・思い切って、同じ宗旨で少し離れたエリアでも良いので他のお寺を自力で探す。
3・思い切って、宗旨を変える。例えば、浄土真宗から真言宗へ。
4・もともと付き合いのあった御寺と縁を切る意味でも、「無宗教でお葬式を行う」
この4番を選択される場合も、ほかの2や3を選択される場合も、身内の意見が1つになりにくいので、要注意です。そこで、結局1番の「我慢する」になってしまう傾向が強いのです。
しかし、宗教観も年々と変わって来ていますので、我慢せずにお寺を変えれる時代、お寺を選べる時代になっていきます。
この鍵は、「インターネット」が握っていると思います。
と申しますのは、同じ宗旨でお寺を変えるのは、葬儀社が紹介する訳にはいきません。そんなことをして、もともとのお寺さんに葬儀社が紹介したことがバレてしまうと、葬儀社はそのお寺さんやその宗旨から大目玉を食らいます。
でも、「遺族が自分で探した」となれば、文句の言いようが有りません。インターネットで、お寺やその評判を調べて、実際にそのお寺に行ってご住職と話をしてください。「このお寺さんの人柄が気に入った」となれば、そのお寺さんに依頼すれば良いと思います。
そうなれば、良いお寺さんに人が集まって、良くないお寺さんには人が集まらなくなります。栄枯盛衰、これが、世の中の仕組みだと思います。
それが、御布施の金額の変化にも繋がっていくと思っています。
④無宗教葬の場合は、お墓や仏壇、納骨や法事はどうしたら良いのか分からない。
この疑問が有って、「無宗教でお葬式をする」ことに踏み切れない場合も多いのです。
しかし、無宗教でお葬式を行った場合でも、この④に関しては、まったく問題は有りません。
お墓
お墓は、別に特定の宗旨でなくとも作れますし、戒名や法名が必要なわけでも有りません。
また、お墓が必要か?との質問に対しては、私は「必ず必要とは思わない」です。
仏壇も同じです。〇〇宗の仏壇ではなくとも、特定の宗教色のない仏壇も売っていますし、必ず「仏壇」を買わなければいけない訳でも有りません。
仏壇やお墓は、「亡くなられた人と繋がりやすいと感じる特別な場所」です。実は我々が勝手に「繋がりやすい場所・繋がることが出来る場所」と感じているだけなので、お墓が無くても、仏壇だけでも良いかもしれません。大きな仏壇を置かずとも、お祀りのできるスペースを確保して「仏壇代わりの特別な場所」を作れば良いと思います。
そこが、故人やご先祖と繋がれる特別な場所として感じることが出来れば良いと思います。しかし、「何もないのは良くはないのかな?」とは思います。
「いつも心の中に居てるから、特にそんな場所は必要ない」と思われる人もいらっしゃるでしょう。
そのお気持ちも分かります。しかし、こんな考えも有りますのでご紹介します。お墓も仏壇も持たないのであれば、お祀りするスペース程度は確保して、「特別な場所(空間・スペース)で特別な改まった気持ちで故人やご先祖と向き合う自分を感じる」のは、「自分にとってもプラスになる」とも感じます。
最近は、「手元供養」という方法も有ります。
「仏壇やお墓を置かない場合」「分家なので本来はお祀りする必要が無い人を祀りたい場合」「嫁いでいるから嫁ぎ先で親を祀ることは出来ない場合」「特定の宗教観が無い場合」。
そんな場合は、自分の手元や家の片隅に少量のご遺骨をお祀りされる人も増えています。
お骨(遺骨)や納骨
遺骨はどうするか?納骨はどうするべきか?という疑問もあるでしょう。
遺骨は、火葬場で処分はしてくれます。しかし、処分してもらうのには抵抗感を持つ人も多いと思います。ということは、大きな骨壺に遺骨を入れて頂いて家に持ち帰ることになります。そのご遺骨をどうすれば良いのか?を、無宗教葬で行った場合には悩んじゃいます。お墓についての考え方は前述しましたが、お墓が無い場合は「どうしたら良いの?」になります。
宗旨に関係なくても納骨してくれる納骨堂
どんな宗旨でも受け入れてくれる納骨堂を運営しているお寺も有ります。そこに永代供養をお願いすれば、費用は掛かりますがお骨を引き取ってくれます。引き取って頂いた後は、そのお寺さんが読経をして全体的に供養をして管理してくれます。そうなれば、「結局、無宗教ではなくなる」かもしれませんが、お葬式を無宗教ですることと、後の供養は別で考えても良いとも思います。
「樹木葬や散骨などの方法」
樹木葬にしても海洋などへの散骨にしても、専門の業者が各地にあります。インターネットで検索すれば、簡単に専門業者が出て参ります。
「ご遺骨をダイヤモンドなどに変える方法」
費用は掛かりますが、遺骨から人工のダイヤモンドや麗石や遺骨真珠といったものが作れます。
手元供養という方法
通常はたくさんのご遺骨を持ち帰られるので、手元に置いて置きたい以外のご遺骨は、上記のお墓や納骨堂・樹木葬や散骨など、何らかの方法で処置しなければなりません。
最近は、手元に残しておきたい分量のお骨を、手元に置いておく為の専用の密封ケースに収納したり・ブレスレットやペンダントに収納したりして、手元でお供養する方も増えています。
法要(法事)
法事は、無宗教でお葬式を行っても、定期的に行うべきだと考えます。
法事を行う意味は、3つです。
1・亡くなられた後の悲しい気持ちが、法事を度々行うことで自然と紛れていく。
例えば、亡くなられてからはやらなければならないことがいくつも有ります。
お葬式・7日毎のお寺さんのお参り・満中陰(49日)法要・百ケ日法要・初盆・春秋のお彼岸・納骨などが有って1周忌(亡くなって1年後)法要・3回忌(亡くなって2年後)法要・7回忌(亡くなられて6年後)法要となります。最初の1年はけっこうやることが詰まっています。ご遺族がよく言われることとして「やらなきゃいけないことが有るから忙しくしているし、だから、自然と悲しみが癒えた」と。「やることが少ないと、悲しい気持ちがいっぱいになっただろうから、やることが色々有って良かった」とよく言われます。
2・「故人やご先祖を忘れない。いま、自分がここにあるのは、ご先祖が有るから」こういう想いで感謝をすること。
お墓参りは先祖供養ですが、法要は「〇〇さんの法要」ですので、故人の〇〇さんに対する感謝の気持ちや〇〇さんを忘れないという気持ちの表れで行うものです。この法要を行うことが、○○さんに対して遺族はやるべきことはしているという意味でも満足した気持ちにも成れるのです。そして、「〇〇さんも喜んでくれている」と思えるのです。
3・〇〇さんのお蔭で、〇〇さんの死という悲しい出来事ではあるけれども、それを縁としてみんなが集まる。この「ご縁で人が集まる」ことが良いことで有り、普段なかなか顔を合わすことが出来ない身内が集まって親交を深める大事な機会なのです。その機会を故人が作ってくくれているのです。
以上の3つの理由から、無宗教でお葬式を行ったとしても、仏式のように、亡くなってから49日や神式のように50日付近に、法要(法事)を行う。
春秋のお彼岸やお盆に故人や先祖を思い出して感謝をする。故人が亡くなって1年後には1周忌・2年後には3回忌の法要を行う。
こういったことは開催した方が良いと思います。
無宗教での法要なので、法要と考えずに「偲ぶ会」として考えて、身内が集まって故人を囲んでの食事会をすることも意味のあることだと感じます。
⑤実際に無宗教葬をする場合、宗教儀式が無い分、進行を作りにくい。
これまでの①~④をとクリアした場合は、最後は「実際の式の内容や進行をどうするか」になります。
「お葬式は葬儀」なので「葬の儀式=セレモニー」です。この進行と内容を「宗教儀式なしで行うのが簡単ではない」のです。
お寺さんなどの宗教者が来て儀式を行っていただくと、それが「お葬式の大部分の内容」で有って、「流れ=式進行」が有ります。
宗教者の儀式が無ければ、セレモニーを自分たちで作っていかねばなりません。
お通夜でも葬儀告別式でも読経など宗教儀式が有るから、30分程度の時間が必要となります。しかし、お別れの儀式は短くても大丈夫です。
というのは、30分ほどの読経などの儀式の時間を、「長いなぁ」と感じている人も実は多いのではないでしょうか?!「意味が有るのか無いのか分からないけれど、儀式だから仕方ないな」と思っている人も多いはずです。
だから、15分~20分という時間で心に残る儀式をすれば良いと思います。
それを提案するのが葬儀社で、その提案をしやすくするのはご遺族がポイントとなります。
故人の情報、例えばこれまでの経歴やエピソード、好きだった料理や趣味や曲など、出来るだけたくさんの情報を葬儀担当者に伝えてください。
そして、葬儀担当者と意見を出し合ってください。これが、心に残るお葬式を作るポイントとなります。
そこで、「葬儀社への事前相談」もポイントとなります。
前もって数社に相談することで、そういったプランを持っているのか?提案が出来るか?を見定めて葬儀社選びが出来ます。
☟葬儀の事前相談についてはこちらをご覧ください
まとめ
今回の5つのステップを踏まえて、「無宗教でお葬式をする」かどうかを検討してみてください。
しかし、改めてお伝えしたいのは、前述したように、仮に今回は無宗教でお葬式を行わないとしても、どんなお葬式の形式でも、「心を込めて出来る範囲でお別れのセレモニー」を行えば、「現時点での最善の選択」と私は考えます。
だから、無宗教でのお葬式を断念したとしても、それは「現時点では仕方がなかった」と気持ちに区切りをつけて、出来る範囲で心を込めてお別れをしてください。
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