2020年現在では、まだ「無宗教のお葬式」の数は多くは無いのですが、これから確実に増えていくと個人的には思っています。
こちらの記事に来て頂いたあなたは、きっと「無宗教でお葬式をするにはどうしたら良いの?」っていう疑問や関心がお有りと思います。
私はこれまで、葬儀の現場で「無宗教のお葬式=無宗教葬」を何度も経験しました。そんな中で、実際に、宗教色のないお葬式を執り行うのは「ご遺族も葬儀社も難しい」ことを実体験しています。
しかしながら、難しくても、ご遺族の想いを汲み取って、心に残るセレモニーをご遺族と一緒にお作り出来たように思っています。
と申しますのは、そういう多くのご遺族とは今でもお付き合いが続いているからです。
そこで、実際に担当させて頂いた経験からの「無宗教のお葬式を実際に行う注意点や流れ」をまとめてみました。
無宗教葬を実際に行う場合の注意点
無宗教葬を行うに当たり、ご遺族側と葬儀社側とに注意点が有ります。
ご遺族にとっても、そして、葬儀社もしくは葬儀担当者にとっても、「無宗教葬を行ったこと経験」がほぼ無いので、難しいと感じるのは仕方のないことです。
しかし、実は「とても心に残るお葬式」にすることが出来るので、語弊が有るかもしれませんが「葬儀担当者にとっては腕の見せ所」と私は感じてお式を担当させて頂きました。
そこで、実際に感じた注意点をシェアいたします。
大前提の2つのチェックポイント
ご遺族と担当する葬儀社とで、まず「2つの大前提の確認」をしなければなりません。
①お寺さんなどの宗教者が不要なお葬式なのか?
「無宗教のお葬式」では、「宗教者に来てもらわない」というスタイルになります。
ということは、お経やお祈りなどの「宗教者による宗教儀式の無いお葬式」をやろうとしていることになります。
当たり前の確認事項かもしれませんが、「まずは、宗教者を呼ばないお葬式と考えて良いのか」は要確認事項です。
と考えますのは、ご遺族も葬儀社も経験が少ない無宗教葬ですから、「ボタンの掛け違い」は避けなければならないからです。
②「宗教色がまったくないお葬式にしたい」のか、「そこまでのこだわりはない」のか?
宗教者を呼ばないとしても、「宗教色がまったくないお葬式にしたい」のか、「そこまでのこだわりはなく、宗教者が不要=宗教者に宗教儀式をして貰わないお葬式にしたいだけ」なのかを、確認しなければなりません。
言い換えると、「どこまで宗教色をなくすのか」の確認です。
「宗教色がまったくないお葬式」となると、焼香や合掌はしなくて、代わりに「献花や献灯」や「黙祷:もくとう」となります。
「宗教者による儀式だけをしないお葬式」の場合は、線香も焼香も合掌も、セレモニーの中で可能となります。
*「遺影写真」ですが、よくある昔ながらのパターンは「黒白のリボンの掛かった黒の額縁」です。
最近は、無宗教葬に関わらずキリスト教式や仏式でも、「黒以外の額縁」を使う場合が増えています。「白」「ダークブラウン」「深緑」などの額縁に「グレーのリボン」など、選べる場合も有ります。(葬儀社によって持ち合わせている色は違います)
実際に無宗教の葬儀をする際の注意点
「お葬式」とは「葬儀」とも言います。
「葬の式=葬のセレモニー=葬の儀式」なので、宗教色を出さなくとも、「宗教儀式のない葬の儀式」を行うのが「無宗教葬」と私は思います。
次は、その儀式を「どのような流れと内容にするか」を考える時の注意点です。
3つの注意点
ご遺族にとっても葬儀社にとっても注意点をまとめてみました。
①「宗教者が不要なお葬式が良い」以外の希望が無い場合
こうなりますと、葬儀をまとめて取り仕切る葬儀社側は非常に困ります。
葬儀社に提案力や経験値が有る場合は、様々な提案をしてくれますが、そんな葬儀社や葬儀担当者は多くはないのが現実です。
「宗教色が無い」以外で、「ほかに何かお願いしたいことはないか」を考えておいた方が良いです。
「こんな風にして欲しいというイメージやアイデアが浮かばない場合」は、「故人はこんな人だった」ということを出来るだけたくさんまとめてください。
とにかく、「宗教色が無い以外」の希望やアイデア、故人の人柄や趣味、好きだった料理や日々の習慣、故人との思い出やエピソードなど、出来る限り多くを遺族で書き出してみてください。
故人の人柄や趣味をキチンと葬儀社側に伝えられるようにすると、葬儀社側からの提案も違ってきます。故人の好きな「音楽:実際のCDやカセットテープ:曲名やアーテスト名」「食べ物」「趣味や趣味の時に使っていた道具」「好きな言葉」などをまとめると良いです。
その上で、「葬儀社と打合せや話し合いを深める」ことをおススメします。
それが、自分たちが「良かった」と思える葬儀の形にする大きなポイントです。
②「宗教者が不要なお葬式が良い」以外の希望がある場合
葬儀社にとっては、非常に担当しやすくなります。
しかし、そのご希望通りに「葬儀の儀式=お別れのセレモニーの中に組み込めるか」という課題も有ります。
例えば、
「参列者から、それぞれ故人に対して何らかの言葉を掛けて貰って順次お花を添えて貰う」➡何を語って良いのか言葉が上手く出て来ない人も多いので、想像よりは短い時間で終わったり、モタモタした時間が出来てしまい、間延びしたセレモニーとなりがち。
「参列者が書いた手紙や短冊をそれぞれお柩(ひつぎ)に入れて貰う」➡事前に皆さんに書いて貰わなければならないので、準備不足の場合は、思ったような感動的なお葬式にはなりにくい。
👇アイデアは、この記事の下部にまとめましたのでご覧ください。
とにかく、何でも葬儀担当者に相談してください。
何か課題がある場合は、ご希望を基にしたアイデアや提案が出てくると思います。
やはり、葬儀担当者と打合せをしながらコミュニケーションを深めることが大きなポイントです。
③葬儀担当者とのコミュニケーションが取れるか?
肝心の葬儀担当者が頼りなくて、「上手くいく?大丈夫?」と思われる場合は、出来れば「葬儀担当者を変えてもらうか、しっかりした上司などのサポートを得られるよう」にお願いするべきです。
我慢せずに、葬儀社(会社側)にその本音を伝えなければなりません。
遠慮して会社側に伝えなければ、基本的には担当者を変更してくれたり、上司や経験豊富な他のスタッフなど会社側のサポートを得られることは有りません。
理由は、葬儀の現場は、担当者に上司や会社側の管理職などが同行することは基本的には無いからです。
なぜかと言いますと、上司などが担当者に同行すれば、「担当者よりしっかりしている上司に質問などが集中し、担当者の意味が無くなってしまうから基本的には同行しない」からです。また、打合せ担当者と実際の式進行担当者が違う葬儀社も有ります。
それは、葬儀社は24時間365日体制を作るために、分業をしているからです。また、小規模なお葬式や葬儀代金が高くないお葬式の場合は、少人数のスタッフで対応しないと経費が掛かり過ぎるので、打合せ担当者が1人で対応するのが普通です。
無宗教葬では、特に葬儀担当者の対応力や提案力がポイントとなりますので、担当者に不満や不安を感じた場合は我慢をしないでください。もちろん、無宗教葬以外の式でも、遠慮したり我慢することは有りません。
葬儀担当者だけではなく、葬儀社自体に不安や不満を感じる場合は、打合せが進んでいれば「葬儀社を変更する」ことは難しいことです・・・。
その場合は、我慢するしかありません。
打合せの初期の段階では、勇気を出せば、ほかの葬儀社に変更することは可能ですが、実際はなかなか変えにくいのが現実です。この場合も、結局は我慢することになりがちです・・・。
こういう状況も想定できるので、無宗教葬でお葬式を行いたい場合は「事前相談」をおススメします。葬儀を行う地元の葬儀社を2社以上は訪問をし、実際に話をして資料や仮見積書などを貰うことも併せておススメします。
無宗教葬の具体的なアイデアやアドバイス
葬儀社によって、簡単に出来ることと出来ないことが有ります。
それには3つの要因があります。
・持っている設備が違う。
・設備などを上手く活用して(例えば、プロジェクターなど)すでに「無宗教葬用のプラン」を作られているところもある。
・地域やタイミングによって、お亡くなりになられてから通夜や葬儀告別式を行うまでの準備時間が違う。当然、準備期間が長いほうが、色々な用意が整いやすい、例えば、スライドショーを作るとすれば、準備期間が長いほうが、準備と作成の時間に余裕が生まれる。
これを踏まえて、内容を書いていきますので、ご了承ください。
儀式としての選択肢
「宗教者を呼ばずにお葬式をする=宗教者からの宗教儀式を行わない」のが「無宗教葬」の基本的な考えですが、「宗教色をまったく入れないのか、入っても良いのか」で選択肢が変わってきます。
宗教者を呼ばないお葬式ですが、ご遺族の気持ちの部分では、非常に重要な時間となります。
「お葬式=式=セレモニー」です。また「葬儀=葬の儀式」です。
「お葬式を行っている・行った」という気持ちになりますので、出来るだけ「式・セレモニー・儀式」の要素や雰囲気がある方が良いのではないかと個人的には考えています。
「故人に感謝の気持ちを伝える式」
「故人が亡くなられてからの幸せを願うセレモニー」
「故人とのお別れをする区切りの儀式」
こういったことを念頭に置いて、進行や内容を考えることをおススメします。
宗教色を排除する場合
「焼香・合掌」を遺族としては行わない形になります。しかし、参列者が合掌することは自由です。
宗教色を排除までは考えない場合
式の流れの中で「焼香・合掌」は選択肢に入ります。
私がおススメする流れ
下記の進行になります。
1・開式
(司会者が会式を宣言)
2・式場を暗くして、故人の遺影に皆が注目
(司会者の合図で、黙祷か合掌)
3・司会者が故人の略歴などをナレーション
もしくは、スライドショーを上映。
もしくは、献奏。故人の好きだった曲をみんなで聴く。
4・献花もしくは献灯
(キャンドルに参列者が火を点火していく):焼香でも可能。
5・遺族を代表しての故人へのメッセージ:誰か(1人でも数人でも)が故人に対するメッセージを伝える。 *悲しさや緊張で言いにくい場合は、司会者が代弁。
6・喪主から参列者へのお礼のあいさつ *悲しさや緊張で言いにくい場合は、司会者が代弁。
7・お柩のふたを開けて、みんなでお花をお柩に入れる :もしくは、お花を入れる前に、メッセージカードを自分でお柩に入れて貰う。
*式前にメッセージカードを用意しておいて、簡単で良いので、メッセージと名前を記入しておいてもらう。
8・お柩のふたを閉めて、お柩の上に花束を贈呈
9・みんなで黙祷か敬礼:もしくは合掌
10・出棺
このような流れがスムースかと思います。
お通夜の流れは?
葬儀告別式の前夜は、仏式で言う「お通夜」です。
前述の流れは、出棺当日の「葬儀告別式」の流れの1例です。
では、その前夜の「お通夜」はどうすれば良いのでしょうか?
選択肢は2つあります。
・お通夜を営む
・お通夜を営まない
<お通夜を営む場合>は、翌日にセレモニーを行うので、個人的には「シンプルな流れで良い」と考えます。
お通夜を行う場合:無宗教葬のシンプルな流れとは?
現代では、参列者は仕事などで忙しかったり、あちこちから来られる場合も多いので、「〇〇時からお通夜を営みます」と連絡します。そして、定刻になるとお通夜のセレモニーを行います。
翌日に告別式を行うので、シンプルな流れにします。翌日の告別式にも参加される人が多いと思いますので、「シンプルながらも、進行や内容は翌日と少し変えた方が良い」でしょう。
【シンプルな流れのお通夜の1例】
1・開式。司会者が会式を宣言。
2・式場を暗くして、故人の遺影に皆が注目。(司会者の合図で、黙祷か合掌)
3・司会者が故人の略歴などをナレーション。
もしくは、スライドショーを上映。(いずれも、翌日の告別式とは違う内容で、シンプルな内容のもの)
もしくは、献奏。故人の好きだった曲をみんなで聴く。(翌日の告別式で「献奏」を行わない場合)
4・献花もしくは献灯(キャンドルに参列者が火を点火していく):焼香でも可能。
*告別式に「献花」ならば、お通夜は「献灯」にすると良いでしょう。
5・喪主から参列者へのお礼のあいさつ。
*悲しさや緊張で言いにくい場合は、司会者が代弁。(翌日とは内容を変えておく)
7・準備して貰った食事をしながら、故人の話題で故人を偲ぶ。
この流れは、「家族葬」でも「家族葬よりも大きな規模のお葬式:一般葬」でも可能です。
最近は「家族葬」が主流の時代なので、きっと、無宗教葬の大多数は「家族葬」でされると思います。
ということは、お身内中心ならば、もっとシンプルでも良いと思います。
理由は「本来はお通夜とは、皆が定刻に集まって式を行う性質のものではなかった」からです。*説明は、次のコーナーにて👇
「亡くなった知らせを聞いて、駆け付けることに意味が有ります」。
だから、服装も地味なら、特に気にすることは有りません。悲しい出来事なので派手な服装にならないようにだけ注意をして駆け付ければ良いです。男性は、上下が黒のスーツではなくともOKです。できれば、ネクタイだけでも黒で駆けつけるのが無難ですが、地味なネクタイやノーネクタイでもOKなのです。女性は、きらびやかなアクセサリーなどや派手な色柄の服装に気を付ければOKなのです。
通夜を行わない場合
最近は、現在のような「通夜」を行わずに、家族だけでゆっくり故人を囲んで過ごすスタイルも出て参りました。いわゆる「1日葬」とか「ワンデイ葬」と言われるスタイルです。
わざわざ集まって貰って「お通夜」という儀式をするのではなく、儀式は出棺当日の「葬儀告別式」のみ行うパターンです。
この場合は、お通夜を営まないので基本的にはお寺さんなどの宗教者は来られません。翌日にお寺さんが来られても、その分、御布施も少なくなる場合が多いです。
しかし、このスタイルはまったく新しいスタイルではなく、「実は昔のスタイルと今のスタイルの融合」なのです。
お通夜は「通夜式」ではなく「通夜」なんです
お通夜は、「通夜式」とは言いませんよね?!
現在は、例えば「19時からお通夜を営みます」といった案内をして、19時からお通夜が始まります。このように、いつの間にか「式」のようなスタイルに変化してしまいました。本来は「式」ではなく、「通夜」なのです。
昔は、文字通り「夜を通して故人を偲びました」。
科学なんてない時代ですから、魔物から遺体を守るために夜を通してろうそくや線香を消さずに、大事な遺体を守っていたのです。
故人や遺族に縁(ゆかり)の有った人が「亡くなった」という知らせを直接や間接的に聞いて、駆け付けました。お寺さんも都合の良い時間に来て読経をしました。
だから、故人や遺族に縁(ゆかり)の有った人の中で来れる人や翌日の葬儀告別式に来れない人が集まって、故人を前にして偲ぶ時間を持てば、現在のような通夜のセレモニーを行っても行わなくても良いと思います。
まとめ
このように、無宗教葬を実際に執り行う場合の注意点を簡単にまとめてみました。詳しく書くと、長くなってしまいますので、説明が足りないところもあるかと思います。そんな場合のご質問などは、コメントをくだされば、私なりの考えで説明やアドバイスをさせていただきます。
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