アドラー心理学に興味を持ったけれど、「課題の分離」って難しくて出来ない気がする…。
そうですよね…。難しい気がしちゃいます!
ところが、コツを掴めば気持ちの整理がつくので便利な思考法!!
実は、何かの時には、「課題の分離」と心の中で唱える「おまじない」になるのです。
*堅い表現の5文字が「たった5文字のキーワード」に変わってしまいます。
アドラー心理学:課題の分離は難しい?
この「課題の分離」は丁寧な説明が必要だと感じます
ところが、丁寧な説明をすると、記事がドンドン長くなってしまいます。
だから、多くの記事は例が少なくなります…。
しかも、例が簡単すぎると現実的には参考になりにくいのです。
理由は、現実の問題は、いくつかの人間関係が混ざっている場合が多いからです。
課題の分離が出来ない?
何事も「簡単な事柄から理解していかないと難しい問題は理解できない」ので、この記事では2つの例を考えました。
具体的な「課題の分離の例と方法」を、これから一緒に考えてみます。
この記事を読まれているあなたは、きっと「課題の分離」については予備知識が有るんだと思います。
*予備知識がまだの方は、こちらを参考になさってください。
課題の分離とは?
簡単に「課題の分離」を復習します。
①課題を「自分の課題」と「他者の課題」に分けます。
実際、自分の心は変えることが出来ても、他者の心を変えることは出来ません。
こんな反論も有るかもしれません。
・他者に影響を与えることは出来るかもしれない。
・他者をコントロールすることは出来るかもしれない。
しかし、どちらも「かもしれない」という仮定です。しかも、成功確率は、かなり低いでしょう・・・。
②他者は変えることが出来ないのだから、変えることが出来る「自分」に視点を集中します。
③変えることが出来ないことに関わっても無駄なので、他者の課題には土足で踏み込まないようにします。極力、関わらないようにします。
④そうすることで、心が割り切れ、トラブルにも巻き込まれにくくなります。
・他者と過去は変えることが出来ない。
・変えることが出来ないことを、クヨクヨ考えても無駄である。
・自分は変えることは出来る。
・自分が変われば未来が変わる。
・自分が変われば相手の心が変わらなくとも相手との関係性に変化が出る。
・未来は自分で変えることが出来る。
例1:職場のトイレでの光景
まずは、自分がこの設定での主人公になって考察してください。
登場人物とストーリー
登場人物
・あなた(自分)
・Aさん(職場仲間・他者)
・職場全体
ストーリー
トイレに入って、大便器に座り込んだあなた。
トイレットペーパーを使い切った後の「トイレットペーパーの芯」が捨てずに置きっぱなしになっています。
この光景には、これまでにも頻繁に遭遇してしまいます。
その都度
「またか・・・」
「誰かは分からないが、自分が使ったんだから、自分でごみ箱に捨てて欲しい」
と思いながら、あなたがいつもごみ箱に捨ててあげます。
頻繁に続くので、今回はこんな風に考えました。
「やっぱり、どうにかしなきゃ」
*「イライラ」「捨てない人は非常識」「なぜ私ばかりが捨てなきゃならないの?」。そんな気持ちが普通は起きちゃいます。
ある時、犯人はAさんだと分かりました。
Aさんだけが、この行動を取っているのか?
Aさん以外も犯人は居るのか?
今回だけ、たまたまAさんだったのか?
この3点については分かりませんが、確実なのは今回はAさんの行動だったという事実です。
*今回はAさんの行動と分かりましたが、「Aさんだけ」とは決めつけないように考えたいものです!
「事実と仮定」は分けて考えることをおススメします。
➡ここで、課題を分離していきます。
あなたの気持ち:
・「またか」「誰?」でイライラ。
・「捨てない人は非常識」
・「なぜ私ばかりが・・・?」
・「最後の人が捨てるべき」
・「犯人の1人はAさんだったので注意するべきか?」
あなたの取る行動:
・「現状のまま、何も行動を起こさない」
・「関係者全体にトイレットペーパーを使い切った人は芯を捨てて欲しいと自分から伝えるorまず上司に伝えて会社から全体に注意してもらう」
・「Aさんのためを思って直接注意をする」
Aさんとは、どんな人?
・「トイレットペーパーの芯は捨てない面倒くさがり」な人?
・「誰かが捨ててくれるだろう」という依存心の強い人?
・「自分が捨てなくても気にならない利己的」な面の有る人?
・「もし会社に知れると、周囲からの印象は悪くなる」かもしれないのはAさん。
課題の分離をしてみる
*ここでは、
・自分がコントロールできることを「自分の課題」
・自分がコントロールできない事を「他者の課題」 としています。
「イライラ・捨てない人は非常識・なぜ私ばかりが?」
・こういった「負の感情」を持つことは精神衛生上、良くない。
・自分のためには「こういった感情は感じないようにする方法を考える」のが良い。
「最後の人が捨てるべき」
・しかし、捨てていないのだから、「自分はどうする?」
👉「自分が捨ててあげるor自分も放置しておく」
➡これを選択するのは「あなた:自分の課題」
➡「自分が捨ててあげよう」と決めたならば「捨てない人に対して悪い感情を持つべきではない」。 「自分が捨てずに、放置する選択も出来る」…「あなた:自分の課題」
「犯人はAさんだったので、注意するべきか?」
・注意したところで、関係が悪くなるかもしれない。注意しても治らないかもしれない。
➡結局は、注意するかどうかは自分が決める「あなた:自分の課題」。
➡関係が悪くならないような言い方を工夫するかは、「あなた:自分の課題」。
➡注意をしてAさんがどう感じるかは「Aさんの課題」。
「職場仲間に自分からトイレットペーパーを使い切った人は芯を捨てて欲しいと伝える」or「上司に伝えて上司から職場に注意してもらう」or「何も行動を起こさない」
「Aさんのためを思って直接注意をする」
➡「Aさんのため」って考えているけれど、注意したところでAさんが受け入れるかは自分では分からない。(自分ではコントロール出来ない問題)
➡Aさんのためになるかどうかは、Aさんが決める「Aさんの課題」。
課題を整理してみる。
・「自分が使い切ったトイレットペーパーの芯を捨てないAさん」は「面倒くさがり
・誰かが捨ててくれるだろうという依存性がある
・自分が捨てなくても気にならない利己的面が有る」そんな傾向がある人。
➡「改善するかしないか」は「Aさんの課題」で、「あなた:自分の課題ではない」。
・「Aさんのような人と親しくしたくない」とあなたが思うなら、付き合いの度合いを決めるのは、「あなた:自分の課題」。
・「こんな一面も有るけれど、ほかの面では仲が良いから、注意するかしないかは別として付き合う」としても「あなた:自分の課題」。
・「注意するかしないか」はあなたの課題だが、注意をしたとしても、その後のことはあなたにはコントロール出来ない。だから、注意をして改善されなくとも、あなたが気を悪くするべきではない。
・「もし会社に見つかったら、周囲からの印象は悪くなる」のはAさんなのであなたは気にすることは無い。しかし、あなたが会社に告げ口をしたと思われて恨みを買う可能性はある。
課題の分離の結果
これで、あなたが何をコントロール出来るかが分かりました。それ以外の事は、コントロールできません・・・。
あなたが、コントロール出来ることに意識を向けます。
・あなたは、自分の気持ちがイライラしている状態を、自分でコントロールできる。
・あなたがAさんに直接的もしくは間接的に注意することは、あなたが決める問題。
・Aさんへ事実が伝わったとしてAさんが行動を改めるかはあなたにはコントロールできないAさんの問題。
・今回のAさんの事を皆が知ってしまった場合、Aさんの事を良く思わないかも知れないのは、あなたがコントロールできないこと。
→しかし、「会社に見つかったのはあなたが会社に伝えたから」という恨みをAさんから買う可能性はある。だから、会社に伝えるのは慎重に!
いきなり、少し複雑になりました。
まず、自分がコントロールできる自分の課題だけを考えます。
「自分の気持ちがマイナスに感じないようにする」ことはコントロールできます。
自分は見て見ぬふりをするのも嫌なら「自分が捨てれば良い」ことです。
*自分も捨てずに放置した場合、自分がその犯人と間違われるかも。それが嫌なら「自分が捨てれば良い」ことです。
*Aさんに注意をしても改善するかしないか分からないし、関係性が悪くなるかもしれない。受け止め方はAさんの問題。
➡Aさんの受け止め方が気になって関係を悪化させたくないならば、Aさんのことはコントロールできないので、Aさんには注意をしないほうが良いでしょう。
➡Aさんの受け止め方が、もし悪くなっても気にならないならば、Aさんに注意をしても良い。
・言い方、伝え方、アプローチの仕方に工夫をするかしないか?これは、Aさんとあなたの人間関係や職場での力関係も関係します。
*このケースで確実に言えることは、Aさんに注意をしてもしなくても、自分の「イライラ」はコントロール出来るはずです。
👉言い換えると、「イライラする必要は無い」ことになります。
といったように、自分がコントロールできることと出来ないこととに分けて考えれば、自分の感情が整理できます。
そして、自分の行動が明確になります。
例2:職場での3人の人間関係
この例では、あなたもAさんになったつもりで、その上で第3者の視点で客観的に課題の分離を考えてみませんか?
登場人物とストーリー
登場人物
・Aさん(自分:今回の主人公)
・Bさん(Aさんの仕事の上でのパートナー)
・Cさん(Aさん・Bさんの共通の上司)
ストーリー
営業事務をしているAさんは、自分が事務サポートしている営業マンBさんの書類ミスが多くて困っています。
そのミスを修正して貰って、Bさんは助かっています。
しかし、Aさんがキチンとチェックして修正してくれるので、Bさんはちっとも改善しません。
改善しないし、自分に対して「ありがとう」という気持ちも感じられません。
しかも、AさんがBさんにミスを指摘するものだから、2人の関係は良くありません。
上司のCさんは、2人の上司でもあるので人事評価をします。
Bさんは世渡り上手なので、事務的なミスをしていてもAさんがサポートしてくれているお蔭で、上司のCさんは気付いていないようです。
Bさんとの関係が上手くいっていないのが原因で、Aさんは自分の評価が低いように感じていて不満に思っています…。
*ここで「課題の分離」をしてみます。
「Aさんの悩み」の整理
・Bさんのミスが多い。そのミスに自分が気付いて修正。そのお陰で、世渡り上手なBさんは上司のCさんからの評価が高い。
・修正してあげているのに、Bさんからの感謝の気持ちが感じられない。
・しかも、ミスを指摘するので2人の関係は悪い。
・上司のCさんは、自分がBさんの修正をしている状況を知らないような気がする。だから、自分がしている修正の仕事についてCさんは理解してくれていないように感じる。
・おまけに、AさんとBさんの関係が悪いことは上司のC さんは気付いている。
・きっと、上司のCさんは、世渡り上手なBさんのほうを自分よりも気に入っているだろう。だから、上司Cさんからの自分の評価は低いと思う。
👇Aさんにとっての「課題の分離」をしてみます!
Aさんがコントロールできないこと
・Bさんのミスが多いこと。
・Bさんがミスを少なくしようと心掛けてくれるかどうか。
・BさんがAさんの事を感謝するようになるかどうか。
・上司CさんからのAさんに対する評価。
Aさんがコントロールできること
・Bさんのミスを指摘するから関係性が悪い。
➡指摘しないようにする。指摘するアプローチを変えてみる。
Aさんがコントロールできないが、Aさんのアプローチ次第で状況が変わるかもしれないこと
・自分のBさんに対する接し方で、Bさんとの関係性が良くなるかもしれない。
・自分のBさんに対するアプローチ次第で、Bさんがミスを少なくするように心掛けてくれるかもしれない。または、ミスの修正に対して「ありがとう」と思ってくれるかもしれない。
・上司Cさんからの評価を上げることが出来るかもしれない。
「課題の分離」で整理されたこと
<Aさんの気持ち>
・Bさんのミスが多いのを減らして欲しい。
・修正しているのだから、Bさんには感謝の気持ちを持って欲しい。
・上司Cさんからの自分に対する評価が低く感じる。その原因は、自分とBさんの関係性が悪いからかも。
・Bさんのミスが多くてもAさんが修正しているからBさんはミスがバレずに居てる訳で、Bさんだけ評価が高いなんてズルい。
実態が分からないこと
・BさんがAさんに対して「ありがたい」と思っていないかもしれない。ところが、実は「ありがたい」と思っているかもしれない。
・「ありがたい」と思ってはいるが、Aさんとの関係が悪いから態度にも言葉にも表せないでいる。
・上司Cさんは、AさんがBさんのミス修正を頻繁に行なっているのを知らないかもしれない。
・実はCさんは「知っている」かもしれない。
「Bさんのミスを修正するのはAさんの仕事なのに、AさんのBさんに対する不満な態度や接し方の悪さが有る。加えて他の人との接し方にもAさんに問題がある」から上司CさんはAさんに対する評価が低いのかもしれない。
*このように、客観的に見れば、いくつもの「事実なのか思い込みなのか分からない」不確実な内容が見えてきます。
改善のアプローチ法
まとめると、下記の3つを何とかすれば改善できそうです。
・「上司Cさんからもっと評価されたい」
・「評価が低い原因はBさんとの関係性が悪いから」
・「関係が悪い原因は、Bさんに有る」
➡課題の分離をしたことによって、これを、いかに改善するかを考える役に立ちます。
そもそも、Aさんの仕事はBさんのミスに気が付いて修正することも役割なはず。
・その頻度が多い少ないは別として、自分の仕事の範囲内。
・Bさんのミスが多くて、自分のほかの仕事に支障が出ているならば問題。
・支障が出ているならば、上司に相談すべし。
・自分の仕事の範囲内でも、ミスが多くて減らして欲しいなら、Bさんとの話し合いが必要。
もし、Aさんが「課題の分離」を覚えて、客観的に自分を見ることが出来るようになれば、
Aさんは上記のような自分の感情に気が付くことができます。
そうすると、Bさんに対するアプローチや考え方を変えることが出来ます。
そうなんです、相手を変えることは出来ません。
しかし、自分を変えることは出来ます。自分を変えることによって、相手との関係性が変わることは少なからず有るのです!!
・例えば、2人で話し合う時の言い方や表現の仕方・アプローチの仕方に工夫をすることが出来ます。
「あなた(Bさん)のミスは多いけれど、それを修正するのも私の仕事。
Bさんが営業に集中できていて、結果が良いから私もサポートをしていて嬉しく思っている。
だから、この調子で、ミスを気にせずに頑張って欲しい。
でも、私も他に仕事を持っているから、同じミスや簡単なミスは少なくしてもらえると助かるわ~」
といった具合に
「Bさんがミスをすることは仕方のないこと」と割り切って、Bさんとの関係改善に重きを置いてみると良いのかもしれません。
*「こんな言い回しが良いかも?」など、Bさんの性格などを考えながらアプローチを変えることが出来ます。
もしかして、上司のCさんからの評価が低いと感じるのは、実はAさんに原因が有るかもしれません。
・自分の仕事の範囲内であるBさんのミスに「イライラ」しているということは、全体的なAさんの考え方や仕事ぶりで上司のCさんは評価していたのかもしれません。
・AさんのBさんに対する接し方が変わり、AさんとBさんの関係が良くなったことで、ほかの面にもプラスとなって、評価がグンと上がるかもしれません。
・AさんとBさんとの関係性が良くなって、結果的にAさんもBさんも両方ともCさんからの評価が良くなれば、改善される問題です。
上司Cさんの評価に対して疑問が有るならば、直接、Cさんに「自分が気を付けるべきことは何か」を質問してみることも必要でしょう。
または、「ほかの営業マンよりもBさんはミスが多いし、同じミスを繰り返すから、どうしたら良いか悩んでいる」ことを相談してみることも良いかもしれません。
しかし、ここでも、アプローチには注意が必要と思います。
「Bさんのミスの修正をするのは自分の仕事だし、Bさんが成績を上げてくれているのは嬉しいことです。
でも、ミスが多いし、同じミスも繰り返すので、私はBさんに対して、どのように応待すれば良いのか分からなくなっています・・・」
みたいな表現をしてみるのも良いかもしれません。
このように、課題の分離をして客観的に考えると、前向きに物事を考える癖が身に付きます。
言い換えると「課題の分離」をすることで「分析できるようになる」のです。
すると、アプローチの仕方や対策の仕方を具体的に考えることが出来ます。
最後に
今回は2つの例しか挙げていません。
また、今回の例でも、登場人物が少ないので、実際は登場人物も多くて、もっと複雑な人間関係のケースもあるかと思います。
複雑な場合や、関わる人数が多い場合は、1つ1つを分けて考えてみてください。
そして、下記を踏まえて考えると改善の糸口が見えてくることが多いと思います。
・「自分がコントロールできない事については、考えても仕方がない」
・「自分がコントロールできることに気を向ける」
・「自分は自分で変えることは出来るが、人を変えることは出来ない」
・「起こってしまった過去を変えることも出来ない」
・「自分が変われば、相手が変わらずとも相手との関係性が変わるかも知れない」
・「自分がコントロールできない事には関わらない=その人との人間関係を辞める・仕事を辞める・コミュニティーを辞める、これも1つの選択」
・「過去と他人の考えは変えることは出来ない」
・「自分と未来は変えることは出来る」
何事も直ぐには劇的に変わらないでしょうが、少しづつでも変わって行きます。
たまには、試行錯誤していると劇的に変わることが有るかもしれません。
こういったマインドで、私も含めてコツコツとコツを掴んで行きたいものです。
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