アドラー心理学の「自分を変えるための5つのキーワード」の内の1つが、この「目的論」です。
「目的論」の反対側の考え方は「原因論」となります。
何事も「因果関係」を探ったりしますが、
アドラーは「人間が持つ悩みを改善するには、原因を探るよりも目的に目を向けた方が断然良いよ!」と教えてくれています。
ところが、「因果関係」という言葉が有るように、「原因の反対語」を調べると「結果」です。
「原因論の反対は結果論じゃないの?」と考えがちですが、ここでは、結果=目的と考えます。
ということは、「目的論が分かることで結果にコミットしやすくなる」とも言えます。
では、目的論と原因論の違いは何なのでしょう?
この記事を読むと、
目的論が理解しやすくなり、目的論を実践しやすくなります。
そして、
「自分を変える」コツが少しでも掴めるようになります。
アドラー心理学、原因論と目的論の違い
たとえば、「何かの行動が出来ない」と仮定します。
「なぜ」出来ないか?を考えてみます。
原因論で物事を考えると、
「〇〇出来ないのは、過去の△△のせい」。
→「ある行動には過去の出来事が関係しているという考え方」です。
→「なぜ」の理由は、「過去の出来事」にあります。
目的論で物事を考えると、
「嫌な思いをしたくないから、〇〇出来ない」。
→「ある行動と過去の出来事には関係が無いという考え方」です。
→「なぜ」の理由は、「未来の出来事」にあり、それが「目的」です。
「その目的を達成するために、〇〇の行動をする」ということです。
「嫌な思いをしたくない」目的のために「○○出来ない=○○しない」ことになります。
→別の目的や考え方を持つことで、〇〇は出来るようになるかもしれないという考え方ができます。
なので、過去の原因に気持ちをフォーカスするのではなく、「先の目的に気持ちをフォーカスすることで行動は変えることが出来る」という考え方です。
原因論のデメリット
原因論は、「過去の原因を改善することで、結果=現在の状況も改善される」という考えです。
しかし、実は、人は原因が分かっても改善されないケースは多いですよね?!
機械じゃないですから!
機械なら、壊れた部品を交換できれば修理できます。
人には、気持ちが有ります。
感情が有ります。気力や精神力も人によって違います。
自分で原因が分かって改善されるなら苦労はしません・・・。
例えば、
例1:「夜、なかなか寝付けないので翌日は睡眠不足」を改善したい。
睡眠不足の原因は「なかなか寝付けない」からです。
「早くに寝付けると翌日は睡眠不足にはなりません」が「早くに寝付けないから悩むのです」。
例2:「成績を上げるために朝早く起きて勉強」したいが、続かない。
朝早く起きることが続かない原因はいくつか考えられます。
その原因を自分では分かっています。
・精神力が足りない。
・早く寝れない。
・前日に疲れが足りない。
などなど、原因が分かっていて改善しようにも出来ないので、続かない訳です。
さらに、原因を人から指摘されたとします。
正論だけど、言われた人によっては「反発心」が芽生えて、改善どころか逆効果になる場合も有りますよね?!
ということは、
・自分が変わろうと思わなければ改善されない。
・自分が変わろうと思っても改善できない場合も多い。
と言えます。
このように原因を追いかけても、解決しない場合は多いのです。
<原因論で考えると>
「早く起きれないのは、前の夜に早く寝つけないから。どうしても寝れないから仕方がない」
「〇〇出来ないのは、過去の△△が原因。△△が治らないから〇〇出来ないのは仕方がない」
→逆に「実行出来ない理由・改善されない理由」として、過去の出来事を結果に結びつけてしまいます。
→そこで、アドラー心理学では「トラウマは関係ない」というキーワードも使います。
アドラーの「トラウマ」「過去」に対する考え方
「バカ」は「馬鹿」と書きますが、「トラウマ」とは「虎馬」では有りません。
トラウマは古代ギリシャ語で「trauma:キズ:傷」なのです。
この言葉の一般的な使われ方は、「心的トラウマ・心的外傷」で「過去に負った心のキズ」です。
アドラーは「トラウマは関係ない」としています。
アドラーは「トラウマの存在は否定していません」が、「トラウマが何かを決定づけるという考え方については否定」しています。
前述したように、人間は感情を持っています。そして、人それぞれ違いが有ります。
だから、「ある原因から同じような結果が生まれる」とは限りません。
理由は、同じ過去の原因がある人でも「結果は違う場合が多くある」からです。
同じような過去のトラウマが有っても「結果が違う場合が有ります」。
「原因→結果」ならば、すべてが同じような結果になるはずです。
過去の出来事(原因)にばかり目を向けてしまうと、出来ない理由がそれになってしまいます。
過去は変えることは出来ません。
しかし、未来は変えれます。
自分も変えようと思えば時間が掛かっても変われます。
このような観点から、アドラー心理学の考え方は
・「原因論」ではなく「目的論」
・「過去」に焦点を当てるのではなく「未来」
・「自分では変えることが出来ない他者」ではなく「変えることが出来る自分」
に焦点を当てます。
「トラウマの否定」とは、こういった考え方なのです。
原因論と目的論の違いの例
ある人が「外に出ると不安になるから出れなくなっている」状況です。
<原因論で考える>
過去に何か原因がある。
過去に何かトラウマが有る。
その原因を探って、不安が起きないように解消する方法を考える。
<目的論で考える>
過去に原因やトラウマが有ったかもしれない。
しかし、こうとも考えられる。
→「外に出たくないから不安という感情を自分で作りだしているかも知れない」。
外に出たくない理由(目的)が有るから、外に出ないという考え方です。
冷静に考えると「なるほど、こういった考え方もあるな!」となりませんか?!
本人も周囲も過去の出来事やトラウマを原因にすることは簡単です。
しかし、それらにとらわれていると、残念ながらいつまで経っても改善されません・・・。
なぜなら、過去は変えることが出来ないからです。
しかし、未来は変えることが出来ます。
目的論のメリット
メリットとしては、この視点を身に付けることで、「改善される確率がグンとアップします」。
誤解を恐れずに言えば「必ず改善される」とも言えます。
その理由は、目的論のメリットを考えれば納得してもらえると思います。
<目的論のメリット>
・改善可能な事柄に視点や焦点、意識を向けることが出来る。
・先の目的のために、具体的に考えて、具体的な行動を起こすことが出来る。
・ある目的が変わらないならば、具体的な行動が上手くいかなくとも、別の方法を考えて行動することが出来る。
・このように試行錯誤していると、いつの間にか、少しずつでも自分は変わっている。
・自分が変わることで、相手との関係性が変わったり、悩みが少しでも改善されたりする。
・自分が変わることで、未来が変わって行く。
最後に、原因論VS目的論
ここで、最後に、目的論と原因論について別の視点から簡単に説明します。
原因論は「フロイト」によって提唱されました。しかし、アドラーは「人間関係の悩みは、原因から解決の方法を探しても解決できない」と気が付きました。
<例えば、風邪をひいて発熱してツライ・・・>
病院で診てもらうと、やはり風邪でした。
ドクターとの会話の中で「風邪ひきの原因は昨晩が寒くて薄着だったからですね」と理由が告げられます。
あなたは「その通り」と思うものの、「だから、どうしたの?私は、風邪を治して欲しいのです」と思うはずです。
目的は「風邪を改善して治して欲しい」のであって「私が治ること」です。
原因が分かったところで、それを掘り下げても意味は有りません。
「今後は薄着をしないようにしよう」と気を付けるメリットは有りますが、風邪は治りません。
目的は「風邪を改善して治して欲しい」のであって「私が治ること」です。
その目的(結果・未来)を手に入れるために「病院に行った」のです。
ある病気を本当に治したいのであれば、また、治る病気ならば、1つの治療法がダメでも試行錯誤を続けるはずです。
万一、治らないと言われる病の場合は、「気持ちの持ちよう=目的の持ち方」で余命の過ごし方が変わるはずです。
このように、目的の設定方法でアプローチや行動が変わるのです。
名著「嫌われる勇気」では、このような文章が有ります。
「我々は原因論の住民であり続けるかぎり、一歩も前に進めません。」P28
「いかなる経験も、それ自体では成功の原因でも失敗の原因でもない。」P29
*「嫌われる勇気」岸見一郎・古賀史健著:より引用
我々は、自分の過去の経験に対して「どのような意味を与えるか」「どのように解釈するか」で自分がどう生きるかを選んでいると解釈できます。
原因論をまったく否定するわけでは有りません。
場合によっては、機械の修理などのように「部品を変えれば直る」ような物事は、原因論で解決します。
しかし、人間の心は、そんな簡単なものではないので、「目的論」的な考え方を身に付けることで、改善されると実感しています。
簡単にまとめると、こういったことを「アドラー心理学の目的論」は我々に教えてくれています。
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